園長のことば~園報より~

園長 根内純

日本バプテスト同盟 盛岡仙北町キリスト教会主任牧師

盛岡大学短期大学部 非常勤講師

  • 「五つの子どもの姿」 (園報83号 2023年6月)
  • †新しい教育プログラム
     昨年四月にいわて幼児教育センターが開設され、今年の三月に新しい「いわて就学前教育振興プログラム」が出来ました。これは、AI等が発達した新しい時代を生き抜くための力を、乳幼児期に育てるためのプログラムです。
     このプログラムを貫く考え方として、五つの大切にしたい子どもの姿が書かれています。
    ① 安心してのびのび自己発揮する子
    ② やりたいことを見つけて夢中で遊ぶ子
    ③ 感じたことや考えた事を自分なりに表現する子
    ④ 自分や友だちを大切にする子
    ⑤ 身近な自然や地域社会に親しみ関わろうとする子
     この五つが、新しい時代を生き抜くため力を身に付けていく、とても大切な子どもの姿です。仙北町幼稚園が普段から行っている教育とも合致します。
     近隣の保育施設の中には、いまだに小学校の先取りのようなことを行っている園もあるようです。それには、保護者がそのような教育を望んでいるという面もあるのだと思います。
     しかし、文字を覚えることや計算をすることは、誰でもしばらくすれば普通に出来るようになる特別ではない能力です。日本人の識字率はほぼ百%です。先取りする意味がありません。それよりも、文字や言葉を使って豊かな表現が出来る力、生活の中で様々な計算を生かす力の基礎を身に付けることの方がずっと大切です。
     
    †非認知能力を育てる
     乳幼児期に小学校の教科教育のようなことをさせるのは、無駄なだけでなく、もっと重要な学びを逃してしまうことになります。
     小学校の教科教育等で育てるような能力を認知能力(テストなどで評価出来るような能力)と言います。それに対して、私たちの心にある、意欲、自信、忍耐、自立、自制、協調、共感などの能力を非認知能力と言います。この非認知能力こそが、新しい時代を生き抜くための力です。
     非認知能力はほぼ乳幼児期にしか育ちません。「三つ子の魂百まで」と言われるように、乳幼児期までの非認知能力の育ちが、その後の人生にずっと影響していきます。また、非認知能力の育ちは、認知能力の育ちにも影響すると言われています。非認知能力の高い子どもは、将来、学校の成績も上がっていく、いわゆる「後伸びする子」になるようです。

    †新しい時代を生き抜く力
     現在の園児たちが成人する頃には、AI等の発達によって、現在の職業の約半分が無くなってしまうという、大きな変化が訪れると言われています。言われたことをする、命令されたことを行う等の受動的な仕事は、機械やロボットにも出来ます。ましてや、字を覚えるや計算をする等は、現在のパソコンでさえも一番得意とするところです。
     新しい時代に求められる能力は、主体的に新しいことに取り組む意欲、コミュニケーション力、想像力、発想力等の非認知能力です。そして、それらの非認知能力を育てるのが、先述の五つの大切にしたい子どもの姿です。
     安心してのびのび自己発揮する。やりたいことを見つけて夢中で遊ぶ。感じたことや考えた事を自分なりに表現する。自分や友だちを大切にする。身近な自然や地域社会に親しみ関わろうとする。このような子どもの姿を、仙北町幼稚園ではこれからも大切にしていきます。当園を卒園した子ども達みんなが、新しい時代に活躍出来るよう、心から祈っています。